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2021年11月29日
福祉共済ブログ
2022年11月15日労災について
こんにちは。神奈川県福祉共済協同組合の蝦名です。
労災保険は、働く人が通勤中や業務中に災害にあった場合に、手厚い補償が受けられる公的保険です。
しかし、会社と雇用関係にある「労働者」に対して適用されるもので、一人親方の場合、そもそも労災保険に加入できるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、労災保険の特別加入制度を利用すれば、一人親方でも労災に加入することができます。
今回は一人親方が労災に加入するための制度を紹介するとともに、加入の際に気をつけたいポイントを解説します。
一人親方とは、建設業などでよく使われる言葉ですが、個人事業主、または自分自身とその同居の家族のみで事業を行う事業主の方のことを指します。
もちろん、建設業に限らず、例えば個人タクシーの運転手、貨物の運送事業、林業や漁船を使った漁業など様々な職種においても一人親方の方はいらっしゃいます。
厳密には、請負で仕事をしている、特定の会社に所属していない、従業員(労働者)を一切使用していない、労働者を使用したとしても労働日数が年間100日以内である場合のことを言います。
また、同居する家族のみで事業を営んでいる場合は、同居する家族は一般的に「労働者」には該当しないため、一人親方となります。
一般的に、労災保険は会社に雇用される従業員などを対象としていて、業務災害や通勤災害に対して治療費や休業補償などが給付されます。
労災保険に関しては「労災保険とは? わかりやすく条件や補償内容、手続き方法を解説!」でも解説していますので、ご参考ください。
建設業を例にしてみましょう。
建設業の場合は、一般的に工事や建設現場ごとに元請会社が労災保険料を支払い、労災保険の保険関係が成り立っています。
そして、建設現場で労災事故が起きた場合は、元請会社や下請会社に所属する作業員(労働者)は労災保険を利用することとなります。
しかし、同一の現場であっても、一人親方として現場に入っている場合は、元請会社の労災保険の対象にはなりません。
同一の現場で働き、同様の仕事に従事していても、労働者と一人親方では労災事故発生時の補償に差があります。
そこで、義務ではありませんが、一人親方の方は自らの身を守るために労災保険の「特別加入制度」を利用することが推奨されています。
労災保険の特別加入制度とは、一般的な労災保険に加入できない方を対象に、国が特別に労災保険に任意で加入することを認めている制度です。
業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人がこの制度の対象となります。
特別加入制度には「中小事業主等」「一人親方等」「特定作業従事者」「海外派遣者」の4種類があり、それぞれ対象者が細かく設定されています。
今回のテーマである「一人親方」の場合、労災保険に特別加入できるのは、単独または同居の家族のみで事業に従事している、または労働者を年間100日未満しか使用しない事業主となります。
なお、労働者を年間100日以上使用することとなった場合や、雇用契約を結ぶ場合などは、一人親方等の特別加入の対象から外れ、中小事業主等の特別加入に切り替える必要がありますので、注意が必要です。
一人親方等として労災保険に特別加入するためには、一人親方等の団体(特別加入団体)の構成員であることが必要です。
特別加入団体とは、相当数の一人親方等を構成員とする単一の団体であり、適正な労働保険事務の処理が可能であることを都道府県労働局長の承認を受けた団体をいいます。
一人親方等の特別加入制度は、特別加入団体を「事業主」、一人親方等を「労働者」とみなして労災保険の適用を行うというしくみのため、特別加入の手続きは、特別加入団体を通して行うこととなっています。
特別加入団体については、各都道府県労働局や労働基準監督署で確認することができます。
また、特別加入団体に所属するための会費(組合員費)も必要となります。
特別加入の場合、労災補償の給付額を算定する際の根拠となる「給付基礎日額」に応じて保険料を選ぶことができます。
もちろん、給付基礎日額が高ければ高いほど補償が厚いということになりますが、その分保険料も高くなります。
労災事故で休業しなければならなくなった際などに、自分にはいくらくらい必要か等、具体的に試算したうえで保険料を決定するのがよいでしょう。
給付基礎日額を変更する際は、事前申請期間中(前年度の3月2日~3月31日)、または年度更新期間中(その年度の6月1日~7月10日)に手続きすることができます。
この変更手続きについても、特別加入団体を通して行うこととなります。
労災保険に特別加入する際は、申請時に健康診断が必要になる場合があります。
特別加入時に健康診断が必要になるのは、下の表に記載されている業務に、それぞれ定められた期間従事していた場合です。
<特別加入時に健康診断が必要な業務の種類>
特別加入予定者の業務の種類 |
特別加入前に先の左記の業務に従事した期間 |
必要な健康診断 |
粉じん作業を行う業務 |
3年以上 |
じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 |
1年以上 |
振動障害健康診断 |
鉛業務 |
6カ月以上 |
鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 |
6カ月以上 |
有機溶剤中毒健康診断 |
参考:厚生労働省「労災保険 特別加入制度のしおり <一人親方その他の自営業者用>」
上記の業務に従事していた経験がある一人親方の方は、健康診断が必要になるケースもあるので注意しましょう。
一人親方の場合、労災保険の補償対象の範囲はどこまでなのでしょうか。
通勤中の災害については一般の労働者の場合と同様に補償を受けることができますが、業務中の災害については、保険給付の対象となる災害は、職種ごとに異なります。
ここでは建設業と林業の一人親方の場合をご紹介します。
建設業の一人親方は、下記に該当する場合に保険給付を受けることができます。
林業の一人親方は、下記に該当する場合に保険給付を受けることができます。
ここまで労災保険の特別加入制度について解説してきましたが、一人親方が労災保険に加入することの重要性やメリットはどんなものなのでしょうか。
労災保険に特別加入する最大のメリットは、労災事故が起こったときに大きな補償を受けられることです。
業務中や通勤途中の災害として認定されれば、治療費は全額補償されます。
また、休業しなければならなくなった場合には、休業してから4日目以降から休業(補償)給付が受けられますので、休業期間中の収入減の補てんとなります。
さらに、後遺障害が残った際には障害の程度に応じて一時金または年金が給付され、万が一のときは遺族へ補償されるなど、掛金に対して手厚い補償内容です。
労災保険の特別加入は義務ではありませんが、加入することで、もしものときへの備えができます。
最近は、ほとんどの建設や工事の現場で「労災保険の加入証明書を提出してほしい」と求められるようになりました。
加入証明書を提出しないと、現場から撤退せざるを得ない場合もあります。
同一の現場において、元請会社の労働者と同じ内容で働く場合であっても、一人親方は元請会社の労災保険の対象とはなりません。
実際、労災に特別加入していなかった一人親方(被災者)が、元請会社の労災適用を求めた裁判においても、被災者と元請会社との間に雇用契約がないために、元請会社の労災は適用されないとされた判例があります(H19年最高裁)。
また、労災は適用されなくても、元請会社には安全配慮義務があるため、被災したことに対して、被災者が元請会社を安全配慮義務違反として訴えることがあります。
上記のことから、リスク回避として、元請会社が労災への特別加入を義務づけている場合があり、一人親方の現場入場の条件として「労災保険に特別加入していること」を掲げていることが多くなっています。
そのため、労災保険に特別加入していることが仕事の受注に大きく影響する可能性があるのです。
通常の労災保険には加入できない企業の役員や一人親方の方は、特別加入制度を利用して労災保険に加入することができます。
一人親方の場合、労災保険に加入することで万が一の事故に備えることができますし、仕事を受注しやすくなるというメリットもあります。
しかし、特別加入団体を通した加入手続きが必要であったり、一部の業務に従事していた経験がある一人親方の方は、加入時に健康診断が必要なこともありますので注意が必要です。
労働基準監督署に確認し、適切な手続きをとってください。
神奈川県福祉共済協同組合では、共済にご加入いただくと、付帯サービスとしての福利厚生を提供しています。
万が一に備えて、労災の上乗せ補償を準備しておくと安心です。
神奈川県内で仕事を行っている一人親方の方や中小企業・個人事業主の方は、神奈川県福祉共済協同組合の傷害補償共済Ⅲもぜひご参考ください!
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