福祉共済ブログ

Blog

製造業の労災事故について解説!事故防止対策や手続きについても紹介

2024年11月15日労災について

こんにちは。神奈川県福祉共済協同組合の蝦名です。

全業種の中で最も多く労働災害が発生しているのが、「製造業」です。

今回は、製造業でよくある労災事故の内容と、事故防止の対策についてお伝えいたします。
労災事故が起こった際の対処法についても説明していますので、ぜひご参考ください。

manufacturing_industry.jpg

製造業で多く発生している労災事故について解説!

厚生労働省が公表した「令和5年(2023年)労働災害発生状況」の「業種別労働災害発生状況」によると、労災事故により休業4日以上となった労働者数(死傷者数)は全業種で135,371 人であり、そのうち製造業が27,194人と最も多く、約20%を占めています。
この人数は2番目に死傷者数が多い陸上貨物運送業の16,215人を大幅に上回っていることから、製造業における労災事故の多さがわかります。

労災事故により死亡した労働者数(死亡者数)でみると、全業種では755人であり、そのうち建設業の223人が最も多く、次いで製造業の138人でした。

製造業における労災事故の発生状況から、死亡に至る大きな事故が約0.5%の割合で発生していることがわかります。
労災事故への対策を確実にすることで、大切な従業員を守りましょう。

製造業で起こりやすい労災事故を確認

製造業では、さまざまな労災事故が起こっています。
ここでは、製造業における労働災害の発生状況をご紹介します(令和5年度の件数)。

1位:はさまれ・巻き込まれ(6,377件)

製造業で最も労災事故の件数が多いのは、「はさまれ・巻き込まれ」事故です。
製造業で起こった死亡事故の中でも最も件数が多く、重大事故につながりやすいです。
よくあるケースとしては、操作している機械に身体の一部がはさまれたり、着衣を巻き込まれたりする事故です。

2位:転倒(5,823件)

作業場の床が水や油で濡れていたことによる転倒以外にも、通路上の段ボールなどの障害物や段差による転倒、フォークリフトなどの運転中に転倒するケースがあります。

3位:動作の反動・無理な動作(3,191件)

重い物を持ち上げた際に腰に過度の負担がかかった場合や、作業中にバランスを崩して無理な態勢をとってしまうケースなどがあります。

4位:墜落・転落(2,870件)

転落による死亡事故の件数も多く、重大事故につながりやすいです。
トラックの荷台に積み込む際にバランスを崩して転落した、高所作業中や機械の点検中に転落するケースがあります。

5位:切れ・こすれ(2,327件)

刃物や工具の取扱いを誤り、身体の一部を傷つけてしまった、ベルトコンベアに接触して皮膚を傷つけてしまうケースなどがあります。

製造業の労災事故防止のポイントと対策

check02.jpg

労働災害が発生する原因は、労働者の不安全行動と機械・物の不安全状態があると考えられています。
これらを解決するための基本的な取組みについてご紹介します。

安全対策の徹底

製造作業に多い「はさまれ・巻き込まれ」事故は、主に機械を使用して作業をしている際に発生しています。
巻き込まれてしまうリスクのある危険な箇所に囲いを設ける、囲いがない場合はインターロックなどで機械が停止する安全装置を設置します。

機械を調整・掃除する際には確実に機械を停止させることを徹底し、主電源を落とすことで機械の誤作動も防止します。

機械操作のマニュアルを設置し、正しい作業手順を作業場に貼り出すなど、作業者全員によく理解させることが重要です。

人員不足による高齢者の労災防止

少子高齢化による人手不足を背景に、シニア世代の働き手が増えています。
人手不足のため、不慣れな作業に配置せざる得ない場合もあり、その結果、労災事故も深刻化しています。
⾼齢者を含む労働者が安⼼して安全に働くことができるよう、転倒・墜落災害防止対策や腰痛対策、熱中症対策を行うことが求められています。

厚生労働省では、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称:エイジフリーガイドライン)を策定し、企業に求める対策や労働者に求める取組み、国や関連団体から受けられる支援などが示されています。

安全衛生教育の徹底

経験年数の少ない労働者は、作業に慣れておらず、危険に対する感受性もまだ低いため、労働者全体において労働災害発生率が高いです。
労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条により、労働者を雇い入れたときは、下記の内容を教育することが定められています。

  • 機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること
  • 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること
  • 作業手順に関すること
  • 作業開始時の点検に関すること
  • 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること
  • 整理、整頓および清潔の保持に関すること
  • 事故時等における応急措置および退避に関すること
  • 上記のほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要なこと

安全衛生教育を行うことにより、どのようにしたら職場で危険を回避し、安全に作業ができるか理解させ、身につけさせることが重要です。
また、正社員を雇ったときに限らず、パート・アルバイトを雇ったときも確実に実施しましょう。

5S活動の徹底

「5S」とは、頭にSのつく「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つをいいます。

「整理」は、要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てることです。
安全に作業できるスペースを確保することで、障害物につまずいて転倒する、物が落ちてきてぶつかる、といった安全上の問題が軽減し、事故の防止につながります。

「整頓」は、必要なものがすぐに取り出せるよう、置き場所や置き方を決めて表示することです。
ムリ・ムダ・ムラのない置き場や置き方にすることで、ムリな姿勢を改善したり、ムダな動作、処理のムラをなくし、事故の防止につながります。

「清掃」は、清掃してゴミや汚れのない状態にすることです。
清掃をすることで、正常な状態を維持して、異常に気づきやすい職場にします。
正常な状態を見慣れると、異常にすぐ気がつくようになり、事故の防止につながります。

「清潔」は、整理・整頓・清掃を実行し、維持した状態です。
汚れや異常を目立つようにして正しい状態にあることを色や形状でわかるようにして、不良品や異常などを明確に識別できるようにすることで、事故の防止につながります。

「しつけ」は、決められたことを、決められた通りに実行できるようにすることです。
ルールを守ることを習慣化させて、協力し合う組織風土をつくりあげることで、事故の防止につながります。

5S活動の徹底により、職場の問題点などが顕在化し、職場の安全性向上の他、業務の効率化、不具合製品の流出の未然防止などの効果があります。

ヒューマンエラーの防止

ヒューマンエラーとは、人間が原因となって発生するミスや事故のことです。
その原因は「意図的」であるものと「過失」によるものに分かれます。

「意図的」に行ったことにより引き起こされるヒューマンエラーは、ルールや手順が決まっていても、あえて手を抜いたり、工程を省略したりすることにより発生し、面倒くさいという考えや業務の忙しさなどが原因となることが多い傾向です。

うっかりミスのような「過失」によって起こされるヒューマンエラーは、注意不足や確認漏れ、勘違い、見逃し、聞き間違えなどが原因になることが多い傾向です。

ヒューマンエラーは、作業者一人ひとりのリスクリテラシーを高めることで削減につなげられます。
ヒューマンエラーが起こる原因や取るべき防止策について理解を深めることで、普段の業務に対する意識を変えられるでしょう。
例えば、以下の3つの活動があげられます。

KY活動

KY活動とは「危険予知活動」のことです。「危険」のK、「予知」のY、を使って「KY活動」と呼ばれています。

実際の職場や現場に潜む危険リスクをすべて洗い出し、想定される労働災害の防止策を行うことで、労働災害を回避する取り組みです。
実際に業務に携わる全員で話し合い、さまざまな角度から意見を出すことによって、先入観や思い込みなどで気がつきにくい危険性を回避した防止策を策定できます。
そして、対策を決め、行動目標や指差し呼称項目を設定し、一人ひとりが指差し呼称で安全衛生を先取りしながら業務を進めます。
このプロセスがKY活動です。

KY活動を行うことで、従業員一人一人が事故を起こさないために取るべき行動について認識できるようになります。

ヒヤリ・ハット活動

仕事中に思わずヒヤリ、ハッとした出来事を「ヒヤリ・ハット」といい、その経験を報告・共有するのがヒヤリ・ハット活動です。

ヒヤリ・ハットは労働災害の発生確率を統計的に分析した「ハインリッヒの法則」におけるインシデントに該当します。

「ハインリッヒの法則」とは、1件の重大な事故の背景には、29件の軽微な事故と300件のたまたま事故に至らなかったインシデント(ヒヤリ・ハット)が存在するというものです。
そのため、ヒヤリ・ハットの段階で危険の芽を摘むことが重大な労働災害の防止になるといえます。

製造業においても、「濡れた床で足が滑り、転倒しそうになった」、「荷崩れを起こして下敷きになりそうになった」、「プレス機のプレス台に手を入れ、はさまれそうになった」など、さまざまな事例があります。
これらのヒヤリ・ハットを貴重な情報と考え、労働災害防止対策に活用することが大切です。

パトロール活動

パトロール活動では、目で見てわかるリスクなどをチェックし、探し、潰していきます。
ルール違反を見つけたら作業者にその場で指摘し、理由を聞いた上で問題点を分析し、改善を促します。
その場で指摘することで、パトロール活動で見られている意識が高まり、労働災害の防止に効果的です。

パトロール活動後は、他の職場とも情報を共有し、危険を未然に防ぐ努力をしましょう。

製造業の労災事故への備え

application_form.jpg

労災事故はいつどこで発生するかわかりません。
労働者の安全を守るのは使用者である企業の義務です。
労災事故が起きないように対策を講じるのはもちろん、もしものときの備えも必要です。

労災保険の申請手順の確認

業務中の事故が発生したときに、労災保険の申請し、労働基準監督署に認定されると、治療費・休業時の補償・後遺障害が発生したときの補償・亡くなったときの補償などが受けられます。
申請のための手順については、福祉共済ブログ「労災の申請手続きの流れをチェック!注意点や必要書類も確認」でご紹介しています。

労災の上乗せ補償の準備

労災保険だけでは、補償が十分ではない場合があります。
例えば、企業が福利厚生規程に定める「見舞金」や「死亡退職金」、労災事故により企業が安全配慮義務違反を問われた場合の「損害賠償金」に含まれる「慰謝料」、「逸失利益」などがあげられます。
福利厚生のための財源確保や、損害賠償リスクに備えて保険や共済に加入する企業が多くなっています。

神奈川県福祉共済協同組合では、業務中のケガへの補償や福利厚生の財源確保、損害賠償リスクへの備えなど様々な補償をご用意しておりますので、お気軽にお問合せください。

製造業に多い労災事故を知り、事故を防止するために適切な対策を

製造業は全業種の中でも、労災事故の発生が最も多い業種です。

発生する労災事故のなかには死亡につながる重大事故もあるため、事故防止の対策を徹底して行う必要があります。

労災事故が発生する原因は、労働者の不安全行動と機械・物の不安全状態があると考えられていて、ヒューマンエラーの解消や設備対策、5S活動といった対策によって事故防止に努めましょう。
労災事故が発生してしまった場合、政府労災の給付金ではカバーできない場合があり、企業の労災リスクへの備えが必要です。

神奈川県福祉共済協同組合では、神奈川県の中小企業の方に向けて「労災費用共済」をご用意いたしております。

従業員の業務中のケガ、事業所の費用損失、労災事故による損害賠償、弁護士費用など様々なリスクを複合的にサポートする内容になっています。

また、ご加入いただくと補償対象の従業員とその同居のご家族を対象とした組合員サービスもご利用できますので、ぜひご活用ください!